
メイカー手数料とテイカー手数料の違いとは?ボット収益に与える影響を解説
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自動売買ボットのバックテストで良い成績が出たのに、本番ではじわじわ削られていく——その原因の一つが、注文の出し方によって変わる「メイカー」と「テイカー」の手数料の違いです。この記事では、両者の仕組みと、ボットの戦略設計にどう関わるかを整理します。
メイカーとテイカーとは何か
取引所の板(オーダーブック)には、まだ約定していない指値注文が並んでいます。この板に対して自分の注文がどう作用するかで、手数料の扱いが変わります。
- メイカー(Maker): 板に新しい指値注文を追加し、すぐには約定せずに「待つ」側。板の厚み(流動性)を作る役割を果たすため、多くの取引所で手数料が優遇されます。
- テイカー(Taker): すでに板にある注文に対して、成行注文や即座に約定する指値注文でぶつけていく側。流動性を「消費」する側なので、手数料はメイカーより高く設定されるのが一般的です。
注文タイプそのものの違い(指値・成行・IOC・ポストオンリーなど)は 指値・成行・IOC・ポストオンリーの違いと使い分け で詳しく扱っているので、約定条件のイメージが薄い方は先にそちらを読むと理解しやすくなります。
なぜ手数料に差がつけられているのか
取引所にとって、板に注文を残してくれるメイカーは「価格を提示してくれる存在」であり、他の参加者がスムーズに売買できる土台を作ってくれます。一方でテイカーは、すでにある注文を消費するだけの存在です。この構造上の役割の違いから、取引所は次のような料金設計をとることが一般的です。
- メイカー手数料 < テイカー手数料(場合によってはメイカーが0%やマイナス、つまり報酬になることもある)
- 出来高が多い利用者ほど手数料率が下がる「VIPランク」制度
※具体的な料率・区分・条件は取引所ごとに大きく異なり、しかも頻繁に改定されます。本記事の数値はあくまで一般的な傾向であり、実装前に必ず利用する取引所の公式手数料ページで最新の条件を確認してください。
VIPランク制度の考え方
多くの取引所では、直近一定期間の取引出来高(および取引所トークンの保有量)に応じて、ユーザーを複数のランクに分類し、ランクが上がるほど手数料率を下げる仕組みを採用しています。おおまかな考え方は次のとおりです。
- 直近30日などの累計出来高を計測する
- 出来高の閾値ごとにランクを設定する(ランクが上がるほど手数料率が下がる)
- 取引所独自のトークンを一定量保有していると、追加の割引が適用される場合がある
ボットを24時間稼働させて取引回数が増えると、自然とランクが上がっていくこともあります。ただし「ランクを上げるために無理に取引回数を増やす」のは本末転倒です。手数料の節約額より、無駄な取引で発生するスリッページや損失のほうが大きくなりがちだからです。
戦略によって手数料の影響度はまったく違う
同じ手数料率でも、戦略によって収益への影響度は大きく異なります。
| 戦略タイプ | 取引頻度 | 手数料の影響度 |
|---|---|---|
| 長期のDCA積立 | 低い(週1回など) | 小さい |
| トレンドフォロー型 | 中程度 | 中程度 |
| グリッドトレード | 非常に高い(1日に何度も約定) | 非常に大きい |
| 板の歪みを狙う短期売買 | 極めて高い | 支配的な要因になりうる |
特にグリッドトレードのように往復回数の多い戦略では、1回あたりの利益幅がそもそも小さいため、手数料がテイカー水準のままだと利益の大半を食われてしまうことがあります。この点は グリッドトレードは本当に稼げる?BTCで実運用して分かった現実 でも触れているとおり、取引回数が多い戦略ほどメイカー手数料をいかに確保するかが設計上の重要なポイントになります。
バックテストで手数料をどう扱うべきか
手数料の見積もりを誤ると、バックテストの結果と本番の成績が大きく乖離します。バックテスト+7.72%が-2.65%に崩壊|自動売買の検証で学んだ3つの罠 でも指摘しているとおり、手数料を入れ忘れたバックテストは本番で高確率で裏切られます。手数料を正しく織り込むには、次の点に注意します。
- 自分の注文がメイカーになるかテイカーになるかを、注文タイプごとに区別してシミュレートする
- 現在のVIPランクの料率をハードコードせず、設定ファイルなどから読み込めるようにしておく(ランクは変動するため)
- 往復(エントリーと決済の両方)の手数料を必ず合算する
簡単な往復コストの見積もりは、たとえば次のように計算できます。
def round_trip_cost(entry_is_maker: bool, exit_is_maker: bool,
maker_fee: float, taker_fee: float) -> float:
"""エントリーと決済、それぞれの約定区分から往復の手数料率を計算する"""
entry_fee = maker_fee if entry_is_maker else taker_fee
exit_fee = maker_fee if exit_is_maker else taker_fee
return entry_fee + exit_fee
# 例: メイカー0.02%、テイカー0.06%の取引所で
# エントリーは指値(メイカー)、決済は成行(テイカー)の場合
cost = round_trip_cost(
entry_is_maker=True,
exit_is_maker=False,
maker_fee=0.0002,
taker_fee=0.0006,
)
print(f"往復手数料率: {cost:.4%}") # -> 往復手数料率: 0.0800%
このように、エントリーと決済で約定区分が違うケースを想定してシミュレートしておくと、「損切りだけ成行になる」といった実運用でよくあるパターンの影響を見落とさずに済みます。
手数料を抑えるための工夫
- ポストオンリー注文を活用する: 意図せずテイカーになってしまう事故を防ぎ、常にメイカー約定を狙う(注文タイプの記事参照)
- 手数料率を設定として外出しする: コードに直接数値を埋め込まず、変更があってもすぐ追随できるようにする
- 取引所選びの段階で手数料体系を比較する: 取引所ごとの基本料率やVIP制度の到達しやすさは大きく異なるため、取引所の選び方 で紹介している観点とあわせて確認する
- 無理な出来高稼ぎをしない: ランクアップのための取引はスリッページと機会損失のほうが大きくなりがちで、自動売買ボットは儲かるのか? で触れた「手数料が儲けを削る主犯の一つ」という構造をむしろ悪化させかねない
MEXCはメイカー手数料が低めに設定されており、注文回数の多いグリッドボットなどの戦略と相性が良い取引所です。手数料体系は変更されることがあるため、口座開設前に必ず公式ページで最新の料率を確認してください。
まとめ
- メイカーは板に注文を残す側、テイカーは板の注文を消費する側で、一般にメイカーの方が手数料が低い
- VIPランク制度により出来高が増えると手数料率が下がるが、ランクアップ自体を目的にしない
- 手数料の影響度は戦略の取引頻度に比例し、グリッドトレードのような高頻度戦略ほど設計上の重要事項になる
- バックテストではエントリーと決済それぞれの約定区分を区別し、往復コストを正しく合算する
- 手数料体系は頻繁に変わるため、料率は設定として外出しし、公式情報を都度確認する
手数料は地味な要素ですが、取引回数が多いボットほど収益を静かに左右します。戦略のロジックを磨く前に、まず自分のボットがどれだけの手数料を払っているのかを一度計算してみることをおすすめします。